空を飛びたい
空を飛びたい

空を飛びたい

と、中3四女が呟きました
視線の先にいたのは緩やかな弧を描いて空に浮かぶ鳶
気持ち良さそうだ、と続けた四女は
特段わたしの同意を待っているような素振りもなかったので
わたしもその鳶の姿を目で追いながらそうね。とだけ応えました

昔わたしも同じように
当時仲良くしてくれていたひとが連れて行ってくれた阿蘇の風景を深く味わって
気持ちよかった、と母に話しかけたとき
あなたの気持ち良いはラブホテルでしょ?と返されたことを思い出しました

可哀想な母は何を当時背負っていたんでしょうね
今となれば母の苦悩ももしかしたら分かち合えるのかもしれないけれど
当時まだ男のひとを知らなかったわたしはその言葉が深く胸を貫いた痛みのせいで
そこにあった食器を全て割り、炊飯器を投げつけてダイニングテーブルをひっくり返したのでした(笑)

育てにくい子だった、と事あるごとに言う母の言葉も最もで
もう、死ぬ。と言い出したのが幼稚園に上がる前
そのときは母が謝りながらぎゅー、と抱きしめてくれたのを覚えています

小学校に上がるころには父方ののおじ達が
こんな世の中に子どもを産むなんてどうかしてるぜ、と
当時まだまだ珍しかった卵管結紮の手術をおばに受けさせた、とか
(なんでそんなことが耳に入ったんだろう)
そんな話を聞いてなんとなくイヤな気持ちになったり…

いろんなことが何もかも辛くてわたしは
風になりたい、と泣いたことも思い出しました
山々を街を海の上を好きなように渡る風になりたい
身体をこっそり抜け出してまたもとのような身軽さに戻りたいと
その時は思ったのでしょうね

四女もわたしに似たところがあるからきっと
毎日の中からちょっと距離を置いて
ふわりふわりと旋回しながら世界を見下ろして
やあやあみんな、頑張っているね
なんて言ってみたいのかもしれません

身体を得て、魂の望みを叶えること
それを終えられたときのお楽しみが出来たよね
その時こそ自由に空を舞ったらきっと幸せよ。
四女の明日が平安であるように、と願う母なのでした

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