ひと恋しさから逃れたくて、温もりに倒れ込んでしまいたくなる
互いの欲望が一致して頬を寄せ合っても肌を合わせてみても
それは愛ではないのだからいずれまた寒さがひたひたと迫ってくる
誰かと共に眠りながら感じる寒さはどれほど痛いか苦しいか
ならば我が身を神殿として独り身であるほうがいっそ潔い
ひとは愛したくてこの世に産まれてくるというのに
愛が何なのかを忘れてしまっているひとが多すぎて
寒さに震えるあまりに小春日和を求めて彷徨う
愛の温もりはわたし達の”外”にはなく
それに於いて結ばれたひととは自我という境界を感じることはない
『人は、たとえ全世界を手に入れても
自分の命を失ったら何の得があろうか。
自分の命を買い戻すのに、どんな代価を支払えようか。』
〜マルコによる福音書 8章36節-37節 新共同訳〜