少し前、言われた言葉です。
あなたはわたしを好いていてくれるけれど
あなたが思っているような良いひとじゃあないの。
彼女は少し笑ってそう言いました
あらそう?内心そう思いつつも
へえ、そうなの。とその時は応えましたが
ほどなくして彼女はわたしに
「もともとあなたとは友だちではない」と伝えて
そして、何処かへ消えてしまいました
傷つけたつもりだったのでしょうか
天衣無縫ぶりっこなわたしに辟易したかもしれません
「あんたみたいに育ちが良い人間にはわからんのよ」
彼女の最後の言葉がそれでした
なにを以って”育ち”の良し悪しが決定されるのかわかりませんが
彼女は自分を野良猫のようなものだ、と喩えました
それは、良くないものなのね。
あなたの中でだけは、だけどね
ひとは
誰かを傷つけようと拳を振り上げ思い切り振り下ろします
お前など壊れてしまえ
粉々に割れて血を流せ
そして、目の前から消えろ
あなたが叩き割ったのは
目の前に置かれた大きな姿見でした
粉々に割れた鏡の破片があなたに突き刺さり
あなたの皮膚を切り裂き
血を流したのはあなた
そして見下ろした床一面に散った破片からは
傷だらけのあなたが、あなたを見上げるのです
痛いなら
苦しいなら
辛いなら
その、振り上げた拳をそっと開いて
自分を抱きしめてあげてください
誰かを傷つけることなど、あなたには出来ないのです