醒めない魔法
醒めない魔法

醒めない魔法

弾きたい曲があるから、と
ヨチヨチ歩きながらピアノレッスンを再開した六男
10ページにもわたる譜読みが終わり、ペダル入れが終わり
あとは部分練習で全体を整える作業に入りました
朝早くからカコカコ…と電子ピアノを叩く音がして夜ご飯の後にもカコカコカコ…
イヤホン越しの鳴りが気に入ったらしく、一日のうち大半をピアノの前で過ごすようになりました

あるときそのまま音を出して弾いているのを聴いて驚きました
あらあらいつの間にそんなに気持ち良く弾けるようになったの??

聞くと、少し前のレッスンのとき先生が
「とっておきの魔法をおしえてあげよう」と教えてくれたことがあって
その通りにしたら本当に、みるみる弾けるようになった、と言います
面白いね、どんな魔法??
じゃあ、聴いててよ!
OK!
と、その”魔法”をわたしにもこっそり教えてくれました

おとなになる、ってどんなことかわかりますか?
それはね
ある時あることに於いて
前に進みたいひとを見つけたとき
それを助けるための魔法をかけられるようになる、ってことなんです

むかし、次男が”リコ練”をしていたときのことでした
今からもう15年くらい前ね。

ある部分の運指がどうしてもうまく行かないんだ、と悲しそうだった次男に魔法をかけました。
そのフレーズをいっぺん吹くたび、ママが正の字を書いてあげることにしよう。
それが100になったあと、曲を通して吹くと必ず上手に吹けるようになっているからやってみる?

もちろん次男はその面白そうな魔法にかかり
わずか2小節ほどのフレーズを吹いてはわたしに正の字を書くようにとねだり
ほんの30分ほどでそれを終えました。
さあ、じゃあ曲を通して吹いてごらん…

苦手だと思っていたフレーズを軽々と乗り越え
歌うように課題曲を吹いた次男の
誇らしげでありながら驚きでいっぱいの笑顔を今でも覚えています
24歳になり、父親になった次男もそれを良く覚えているそうです

おかあさんになるという楽しみのひとつに
こうして、子ども達に素敵な魔法をかけてあげられる機会がそこかしこに落ちているということがあるでしょう

もちろん、こちらがおとなになりきれていなかったり
魔法にかける機会を見落とし続けてしまえばそれまでです
また、素敵な魔法をかけるために静かなこころとあたたかさが必要で
まあまあ子育て中にそんなもん持てるかばーろー、となりがちな割りに
悲しいかな、冷たい呪いは実に簡単にかけてしまえるという不思議。

もちろんわたし達もまだまだ修行の身
一流の魔法使いになるためにはきっともう少し時間がかかりそうです
でもね、少しずつで良いんです
わたしはこんな魔法をかけるのが得意なのよ、って
ひとつだってあれば人生は遥かに楽しいでしょ

六男も
リズム変えを繰り返し繰り返して、どんどんピアノが上達しています
これを「あったりまえの練習じゃん」と言ったとき
その魔法からは醒めてしまうの。
わたしはずっと、魔法にかかっていたいなと思っています

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