一流と、それ以外
一流と、それ以外

一流と、それ以外

誰も思いつかなかった資材にいち早く着目し
クラフト資材として不動の立場を獲得するに至るまでの道をたった一人切り拓き
そのテクニックを独占しようとした企業をあっさりと切り捨て
誰もが手に入れられる価格で惜しみなく販売するひと。
なぜそんなことをするのか、と尋ねたときそのひとは
たくさんのひとに手作りを楽しんでもらいたいから、と言いました
開発したテクニックを詳らかにするのは?との問いには
自分は常に進化しているから一つひとつにはこだわらない、と答えました。

アトリエ中にひしめく繊細な水彩画、息遣いまでしそうな人物画
幾万の線から偶発を装って産まれた龍、美しい月、愛らしい犬や猫、そして100号サイズの龍たち。
108つの灯火を描こうと思った、という作品の前では
「描いてるうちに飽きちゃったw」と言ってのけるひと。

初めて出会った龍とのエピソード
山の彼方に躍る龍を見つけたときのお話をしてくれたとき
「僕は画家だから、見間違えることは無いんです」と言い切ったのは
描いて、描いて、描ききったひとだからの自信とも言えないような当たり前。

キャンバスの向こうからこう描いてくれ、と話しかけてくるものを拾い上げるというそのひとは
道具として超一流だと龍から認められた証を刻み続けているけれど
「本当の龍はこの絵だと思います」と、意外すぎる一枚を指す。

西洋医学の権威でありながら漢方薬を自在に使うそのひとは
いつも患者さんに対して逃げ道を用意する。
余白を許さない西洋医学と余白だらけの東洋医学は
彼の腕の中でいとも容易くまぜこぜになる
地位も名誉もカネさえ手に入れても
そのひとは家族との夕食を最上の喜びとする。

とことんまで身体を使ってたどり着いた場所で彼らはとても優しい。
彼らは一度ならずたびたび折れたからこそしなやかだ
俺が俺がと主張するばかりのなんと五月蝿いことか不快なことかを
彼らの傍らで嫌というほど感じる

どんなに小さくても目立たなくても
誰もがその人として超一流で
エゴとだってうまく渡り合っていてば振り回されなどしない。

醜いエゴモンスターをわたしは哀れに思う
おまえなどこの世に産まれないほうがいっそ幸せだったのだ。
一刻一秒でもはやく光に帰れるよう
おまえの魂と共にその日まで祈ろう

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